海外駐在員の苦悩の正体は何か?

『海外駐在員にずっと憧れていた。』

『早く海外駐在をしたい。』

こんなサラリーマンは多いのではないだろうか。 私もそのうちの一人であったように、某商社に入社して9年目、ようやく海外駐在の切符を手に入れた。海外駐在員は実は孤独であり、激務であり、想像以上に大変であるということについて、原因を考えてみる。

 

1、いきなり管理職になる。

  ほとんどの駐在員は現地社員のマネージメントを行うだろう。日々のタスク管理、会議の進行、予算数字管理に加え、現地社員の採用・査定・指導。と業務範囲は日本で行っていたモノよりも遥かに広がる。ここが最初のハードルである。

日本では、営業も行い部下の管理もするいわゆるプレイングマネージャーが一般的であるが、その実態はマネージメントについてほとんど知識がない状態のままである。あっても数時間の社内研修などであろう。本質的には、マネージャーはマネージャーの仕事をしなくてはいけない。部下から報告を受け、解決できない問題に対して改善案を提示、迅速な意思決定、職場環境の整備、部下は上司は自分より優れていて当たり前だと思っているし、部下が解決できない問題こそ上司に相談をするのだ。

そのような状況下、駐在員マネージャーは実のところ決裁権がさほどなく、本社へのお伺いが必要である。それを部下に『本社に聞かなければ判断できない』など安直に返答してしまうと一気に部下の信頼を失うことだろう。

 

2、本社・現地対応で長時間勤務。

 日本企業の海外駐在として働くということは、時間軸を二つ持たなくてはならないといういうことになる。現地での業務を終えると同時に、日本が始業すれば日本本社とのコミュニケーションのため、日本時間でも動くことを余儀なくされる。

私の場合、米国西海岸に滞在しているため、時差はー17時間。午後4時に日本は翌日の朝9時を迎える。日本との会議や重要な相談事項は基本出席者の多い日本時間に照準を合わせることになる。よって、いつも打ち合わせは午後4時以降で遅い時は深夜にまでなる。

一方、現地の仕事は通常通り動いているので、必然的に長時間勤務になる。

 

3、商習慣の違い

 さて、個人的にはこれに一番苦労している。商習慣の違いである。

これは、文化的背景、いわゆるコンテクストの違いによるモノだ。ここでは、米国で働く私の場合を例に取りたい。

・米国人のできる、やるは日本人のそれとは違う。

 極端な例だが、米人はフランス語で少し挨拶ができればフランス語ができると言う。

 難易度の高い仕事を振る時、米人がI can do it,と言う時はやってみると言う意味合いが強い。日本人の場合は8割くらいできると思っていても、できるとは言わないであろう。少なくとも、難しい、完璧にはできないと思うけどやってみます等の枕詞がくることが多い。 これは彼らが悪いのではなく、この国の習慣である。これについては、別途書き綴りたいと思う。

・会議の在り方。

 日本人はどちらかと言うと、言う前にしっかりと考え、発言することが多い。一方米人は、発言しながら自分の考えをまとめていくことが多い。聞いている日本人からすると、英語でズラズラ話される上に、結論までが遠かったりするので、結局何言っているのかよくわからないと言うこともよくある。これは、米人と日本人にとっての会議の在り方が異なるからである。彼らにとって、会議とは意見をぶつけ、より良い結論に導く為の物で、内容よりも、発言すること自体に価値がある。(もちろん、内容が重要であるが)。日本人によくありがちな、ずっと黙っていて結局発言しないとなどは論外であり、その会議に貢献していないとみられてしまう。

 その他にも多々ありすぎるが、米国人との仕事の進め方については、良書が多くある為、割愛する。

 

4、家族環境

基本的には不慣れな環境に家族で住むことになる。奥様の語学力も重要であるが、自分がやらなくてはいけないことが日本より圧倒的にある。

私の場合、妻は英語はそこそこできるので、日々の買い物などは全く問題ない。

しかし、子供の学校の手続きや病院の予約などは私がやらなければならない。また、自分は仕事という外部とのつながりがあるが、家族は家族以外コミュニティがないところからスタートする。日本人駐在員の集まりとうで日本人コミュニティに入り、外部とのやりとりを増やすことはできるが、今度そこには、駐在員妻たちのご近所付き合いが始まる。これはこれで色々と大変らしい。。また、子供は結構敏感で、私の子はプリスクールに通う初期の頃は毎日号泣していた。また、英語は喋れるようになるが、日本語が雑になる為、家で日本語を教えたり、平仮名の読み書き等も教えなければならない。

詰まるところ、家庭のタスクも日本より遥かに増えるのだ。

 

細かくは他にも多々あるが、

これらが私が実際経験し、感じている駐在員の苦悩、主要因4選である。

 

海外駐在を目指す方、している方の参考に少しでもなればと思う。